持ち運べる絵
透明水彩でブックカバーを作った。絵画が日々のカバンの中に入る、そのことについて。
絵は飾るものだと思っていた。壁に掛けて決まった場所から動かないもの。絵を描きながら、日常的にイラスト的ではない「絵」を持ち運べたらいいと思うようになった。
人が毎日カバンに入れて持ち歩くものの中に絵があってもいい。そう思って、透明水彩でブックカバーを作った。
もちろん額に入れれば絵として飾ることもできる。大きすぎず、小さすぎもしない、A4 (210mm × 297mm)サイズ。
ブックカバーとして機能させるには、適度な厚みと耐久性がいる。ツルツルとした手触りと印刷の鮮明さ、透明水彩のタッチとの相性が気に入って滑らかで手触りの良い片艶晒クラフト69kg/㎡を採用した。
本という形状の特性上、背の部分で絵が分断される。それを嫌がらず、むしろ開いたときと閉じたときで見え方が変わっていても楽しめるような抽象度で風景を構成した。
完成して本に巻いてみると、絵の見え方が変わる。額に入っているときとは違う。本が開かれるたびに絵も動く。ページをめくる手が絵の一部を隠したり、また現れさせたりする。
カバーというよりも機能を持った絵という感覚に近い。
カバンの中で他のものと触れながら、角が丸くなっていくはずだ。汚れもつくかもしれない。それでいいと思っている。使われた痕跡はその絵がどこかへ連れて行かれた記録になるし、壁に掛けたままの絵には残らない時間の層としてまた違った楽しみ方ができる。